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松右衛門帆の特徴
 

松右衛門帆布の特徴として挙げられるのが、「見た目」です。
現在流通している服飾素材としての一般帆布と見比べても、その違いは一目瞭然です。
この見た目の違いは、織組織・糸の太さ・糸の撚り合わせ(何本かの糸をねじり合わせ1本の糸にすること)などによって生じます。
次に「厚くて丈夫の割に軽くてしなやか」という一見相反する要素です。
本来、帆布はその使用用途に応じた「柔らかく・軽く・薄い帆布」と「硬く・重く・厚い帆布」があり、規格に基づき区分されています。
帆布は日本工業規格(JIS規格)により、1〜11号まで分けられ、数字が小さいほど硬く重く厚い帆布となり、数字が大きいほど柔らかく軽く薄い帆布になっています。(綿帆布規格表・株式会社タケヤリHP他より参照 ※1997年 帆布のJIS規格は廃止)
松右衛門帆をこの規格に照らし合わせると厚みが規格外の「0号帆布」に相当します。
織組織とは経糸と緯糸の組み合わせであり、一般帆布は織組織の中で頑丈な「平織り」と呼ばれる織組織です。経糸と緯糸を1本ずつ組み合わせ布にしたもので他の織物のような複雑な模様はありません。
松右衛門帆は太さの違う経糸緯糸を2本引き揃えにし、平織りにしています。
(この織り方を「ななこ織」や「オックス」とも呼ぶ)
1812年刊の造船技術書「今西氏家舶縄墨記 坤(いまにししかはくじょうぼくき こん)」に「松右衛門帆と言うは、太糸を縦横二た筋づつにて織たる帆なり」と紹介されており、一般帆布と違うことが明記されています。
一般帆布の何倍も太い糸によって0号帆布に相当する厚さや丈夫さを生み出しています。
下:松右衛門帆と一般帆布(平織り)の比較 近代帆布の原点「松右衛門帆」と一般に流通している「一般帆布」との違い



松右衛門帆は、柔らかさと軽さをキープしつつも厚くて丈夫という帆布としては矛盾している要素を成り立たせており、極太糸で経糸緯糸の太さの違うななこ織、という現代ではあまり見かけない独特な織り目を持った帆布になっています。
御影屋(工楽)松右衛門はどのようにしてこの「松右衛門帆」の考案したのでしょうか。
松右衛門帆以前、「帆布」というもの存在せず「帆」を使っていました。
「帆」とはつまり帆船に張られ風を受けるもの、であり風を受けられて船が進めばなんでもいいわけです。そこで風を受けるために様々なものが使われてきました。
藁や筵(むしろ)、麻布などで代用したもの、木綿が普及してからは木綿布を何枚かつなぎ合わせたもの(これを刺帆という)を主に帆として使用していました。
しかし、船が大きくなり移動距離が増えると当然それに見合った帆が必要となります。
筵では強風に耐え切れず、麻は水を吸って重くなり操舵性が悪く、刺帆はつなぎ合わせた部分の強度が弱く、帆のメンテナンスの為にたびたび寄港や停泊をする必要がありました。
しなやかで風をたくさん受けられ、水刷毛が良く、軽く丈夫な帆が求められていたのです。
そこで御影屋(工楽)松右衛門が発明したのが「松右衛門帆」です。
極太糸を使用した織り方を工夫し、厚みと丈夫さを両立させました。
また、綿の特性として水を通さず空気を通すので、当時の帆の素材としては最適ともいえたでしょう。
試行錯誤の末に生み出された「松右衛門帆」は他の何かで代用された「帆」ではなく、帆として作られた布「帆布」です。これは日本帆布の元祖とも呼ばれ(wikipedia「帆布」他より参照)日本の海運業に大きな発展をもたらしました。
現代に松右衛門帆布を復活させよう、と試みた際に困難を究めたのが基本となる極太糸が工業的に手に入らない事でした。
そこで、御影屋(工楽)松右衛門のように工夫を凝らし、要求される糸の太さを生産可能な糸で特注の撚糸機にて数本撚り合わせ、撚り係数を調節し独自に再現することに成功いたしました。
こうして、現代に類を見ないほど厚く丈夫でありながら、しなやかで軽い帆布「松右衛門帆」が蘇りました。

※参考
神戸大学海事博物館
松木哲(1998)「松右衛門帆(MATUEMON:JAPANEAE SAIL CANVASIN19C)」海事資料館研究年報 26:1-10
高砂市教育委員会編(2013)「風を編む 海をつなぐ 工楽松右衛門物語」
みなとの偉人研究会(2008)「みなとの偉人たち 時代への挑戦・海からの日本づくり」ウエイツ
関川正彦・樽永著(2009)『歴史群像シリーズ特別編集 図解「江戸の化学力」』大石学監修 (株)学習研究社
高砂市史編さん専門委員会(2010)「高砂市史 第二巻 通史編 近世」高砂市
高砂市教育委員会編(2013)「風を編む 海をつなぐ 工楽松右衛門物語」高砂市教育委員会
「北前船」展実行委員会
兵庫県歴史博物館編(2015) 『新潟・兵庫連携企画展図録「北前船」』「北前船」展実行委員会
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